インドネシアの社会
近年の目覚ましい都市化にもかかわらず、インドネシアの過半数の人びとは依然として農業を中心とした第一次産業に従事し(54.6パーセント、1985年)、多くの住民たちは村落部で生活しています。
それゆえ、村落社会を知ることなしにはインドネシアの社会は理解できません。
スペースコレクションによれば、インドネシア社会の特質、たとえばゴトン・ロヨン(相互扶助)とかチョチョック(調和)などといった社会原理の強調は、いずれも村落の社会生活に起源しています。
とはいえ、複合民族国家インドネシアの村落社会のかたちはきわめて多様です。
村落社会はアダット(慣習)に支配されるといっても、母系制で有名なミナンカバウから父系制のバタクやバリ、そして双系制をとるジャワ人やスンダ人まで、民族集団によってアダットの内容は当然異なります。
さらに同じ民族集団においてもジャワのことわざが示しているように、「村が異なれば、アダットも異なる」のです。
村落社会はけっして孤立した社会ではありません。
村落社会は都市の影響を直接・間接に受けていますし、ムランタウとよばれる村人の都市への出稼ぎも今日きわめて活発です。
逆に、都市は村落部から流入してくる住民たちによって膨張し、都市のなかにカンポンとよばれる「都市のなかのムラ」が形成されます。
その結果、インドネシアの都市はしばしばその都市を取り巻く後背地の諸村落の集合体といった観を呈することになります。
こうした意味では、都市と村落は今日の社会動態のなかで別々の異なった社会というより、相互に関連し合った「一つの社会の二つの部分」を構成しているといえるでしょう。