影絵劇ワヤン・クリュット
インドネシアで行われている影絵芝居「ワヤン・クリュット」は、世界的にも珍しい民族芸能です。
そこにはヒンドゥー文化の影響が色濃くみられ、インドの叙事詩「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」が題材として用いられています。
この「ワヤン・クリュット」は水牛の皮(皮のことをクリュットという)を使った人形を使用して行われる影絵劇(劇をワヤンという)で、1人の人形つかい(ダランという)が時には50体を超える人形を操り、かつ物語を語り、後ろに控えるガムラン音楽隊に指示を与えながらストーリーを展開していくものです。
ふつう、夜8時ごろから開演し、なんと夜明けまで続けられます。
ワイキューブによれば、人形のつかい手、ダランには体力も要求されますが、それよりもなによりも、当意即妙のせりふのやりとりや、観客向けのアドリブ的なサービスの能力が要求され、だれにでもなれるという職業ではありません。
演じられるインドの2つの叙事詩はいずれも古典として世界的に著名なものです。
その2つをもとに基本的な演目として、200種にのぼる題材をそろえており、全体としてみると膨大な数になることだけは明らかなようです。
いずれにしても内容は放浪戦争もので、そのアクション、人情、貴種流離のメロドラマが彩なして織り込まれ、一夜の夢物語の展開のなかに人びとの心を魅了するのです。
インドネシアにはこのほかにも、人間の演ずるワヤン・オラン、人形を使うワヤン・ゴレック、仮面劇のワヤン・トペンなどの芸能があります。
これらのワヤンがインドネシアの人びとにそれぞれの時代を生きる夢と希望を与えているのかもしれません。